文部科学省「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」
1.目的
大学等が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・地域貢献を進める大学等を支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的とする。
2.支援内容
補助期間:最大5年間
事業規模:補助金基準額: 58,000千円(年間)
3.申請状況(H25年度)
大学等から319件(単独申請299校、共同申請43校、計342校)の申請があった。
4.選定状況(H25年度)
事業52件(単独事業48件、共同事業4件)が選定された。
高専関係では、単独事業は1件(本校)、大学との共同事業は1件(舞鶴高専)であった。
広島商船高等専門学校の大学COC事業内容
1.事業名称
離島の知の拠点形成-離島高専の教育研究と離島の振興・活性化-
2.事業の概要
(1)事業の目的
今日の離島の深刻な課題として、少子高齢化による人口減少と経済の縮小、交通の確保と介護サービスの負担増大などがある。本COC事業の目的は、瀬戸内海中央部の離島「大崎上島」に立地する国立高専として、自治体・団体・住民と連携・協力し、離島ニーズに沿った教育研究のあり方を検討して学科・専攻科の教育改革を推進するとともに、離島地域の活性化のための研究と社会貢献活動を行う。
①離島資源を活用した教育を行い、故郷や地域への関心・理解を深めるとともに、将来、地域に貢献できる人材を育成する。②本島を含む国内の離島課題(ニーズ)と本校の研究(シーズ)をマッチングさせて、新たな研究活動を創出し、離島社会の生活の向上と産業の振興を図る。③学生・教員が行う児童生徒・住民・高齢者などを対象とする教育サービスに加えて、地域産業界の人材育成を支援する。④教育研究活動の成果を情報発信・共有し、全国離島の課題解決に貢献する。
(2)連携自治体・団体
①連携自治体:大崎上島町、広島県
②連携団体等:公益財団法人日本離島センター、海上保安庁呉海上保安部、大崎上島町教育委員会、大崎上島町地域協議会、大崎上島町商工会、木江地区造船海運振興協議会、大崎上島町社会福祉協議会、大崎上島町医師会、大崎上島町観光協会、広島ゆたか農業協同組合、大崎上島町有害鳥獣駆除対策協議会、NPO法人かみじまの風、広島商船高等専門学校産業振興交流会、中国電力株式会社
3.本校の目的と本事業の位置づけ
(1)本校の使命
瀬戸内海の恵まれた自然環境と長い伝統に根ざした教育研究資源を活用し、世界や地域で活躍できる人材を育成するとともに、地域社会の生活・産業の発展に寄与する。
(2)本校の特徴
①本校は、瀬戸内海中央部の離島「大崎上島」に立地する国立高専である。
②本校は、本科3学科(商船学科、電子制御工学科、流通情報工学科)及び専攻科2専攻(海事システム工学専攻、産業システム工学専攻)から構成され、学生は、船舶・交通・情報通信・流通・経済など、多くの授業科目において離島社会に関わる学修を行っている。
③地元の自治体・団体・住民と連携・協力し、地域(離島)社会のニーズに沿った教育・研究・社会貢献の各活動を推進している。
4.本事業における「地域」の設定
(1)教育研究の「地域対象」
①大崎上島(本校立地)、②瀬戸内海離島(内海)、全国離島(内海・外海)へと「地域」対象を本事業の進展に沿って順次拡大する。
(2)離島社会の課題-将来の日本社会が現在の離島社会である-
①超少子高齢化の進行と人口減少、②生産年齢人口の減少と経済規模の縮小、③本土との社会的・経済的格差の拡大、④交通・医療・介護の負担増と財政状況の悪化、④無人化する島も年々増加し、排他的経済水域及び大陸棚の保全・利用の視点から外海離島の重要性が増している。
5.教育・研究・社会貢献の現状と本事業における達成目標
(1)教育
①養成すべき人材像
◇卒(修)業後どの地域で生活しても、若き時代を過ごした本島や生まれ育った故郷を思い、その地域を支援する心を培い、今日の困難な社会問題を解決できる人材を育成する。
②地域志向教育の内容
◇(講義科目)一般科目・専門科目を問わず、地域・海域・離島等に関わる教材使用・話題提供・自学自習レポートの提出など、地域社会への関心と理解を深める。
◇(実験・実習・演習や卒業(特別)研究)学修した知識・技術を活用し、「問題点とその原因の発見能力を身につけ、解決策を考え、それを計画して実現する能力を養う」ために、地域課題を取り上げ、それを解決する能力を養う。
③地域志向教育(シラバス明記科目)の現状(H25年度)と達成目標(H29年度末)
◇本科:33科目→82科目、◇専攻科:21科目→31科目、◇学生評価(地域志向教育に満足している学生の割合):本科;45%→90%、専攻科;100%→100%、
(2)研究
①離島社会に関する研究
◇離島社会の課題(ニーズ)を12分野に分け、本校の研究(シーズ)とマッチングし、この研究成果を情報発信して、離島社会の振興・活性化に寄与する。
②離島社会に関わる研究分野ごとの目標(離島研究件数:H25年度→H29年度末)
◇人口・動態(2→6)、政策・財政(0→4)、交通(16→25)、情報通信(2→8)、産業(5→15)、生活・環境(3→9)、医療・福祉(2→6)、教育・文化(4→12)、観光・交流(0→6)、エネルギー(2→6)、防災・安全(2→6)、情報発信(0→6)、他(1→3)
◇総計(39→112)
③離島社会研究に取り組む教員数(H25年度30%→H29年度末91%)
(3)社会貢献
①社会貢献(大崎上島町を対象)の分野
◇小中学校の教育支援(国際交流、出前授業、体験教室、合宿研修、インターンシップ、スポーツ教室)、◇地域住民の生涯学習、◇高齢者支援(施設・家庭訪問)、◇障害児(者)支援、◇行事・イベント参加、◇地域交流(児童生徒・住民)、◇環境美化活動、◇地域人材育成(産業・教育・自治体の関係者)
②地域貢献の現状(H25年度)と目標(H29年度末)
◇社会貢献活動の件数(参加学生の延べ数):45件(443人)→64件(573人)、◇社会貢献の体験学生の割合:本科;44%→90%、専攻科;100%→100%、◇社会貢献を実施する教員の割合:70%→91%
6.学内の実施体制
(1)学内の実施体制
本申請に係る事業を推進するための実行委員会を立ち上げ、その下に教育、研究及び社会貢献の各部会を配置して、本事業の実施計画を策定するとともに計画の進捗状況を審議する。
①実行委員会: 校長を委員長とし、大崎上島町の行政・団体等の長を委員として委嘱
②部会: 担当副校長を部会長とし、本町の行政・団体等の実務責任者を委員として委嘱
③ワーキンググループ(WG):各部会の下に、既存組織の本校教職員で構成される教育改革、研究推進、地域貢献の各WGを配置し、具体的な事業計画の原案策定と本事業の進捗状況を点検・調整する。
(2)評価体制
事業全体を評価する委員会とその下に教育、研究、社会貢献の各分野を評価する分野別評価委員会を整備し、事業計画、目標達成度や成果・効果などを評価する。
①評価委員会: 全国レベルの有識者に委員を委嘱、年1回程度開催し、評価結果を次年度の事業計画に反映する。
②分野別評価委員会: 広島県・本町の有識者に委員を委嘱、年度ごとに数回開催し、事業の進捗状況を評価し、事業活動に反映する。
③本事業の達成目標・成果・効果の評価指標
◇教育、研究及び社会貢献ごとに、本事業の達成目標を数値で明記している。
◇地域志向の教育効果は、学生の満足度や社会貢献への参加学生数で評価する。
◇研究成果は、調査研究では「課題調査とその結果を踏まえた提言の具体的な事例」の有無、技術研究では「課題解決の技術の実用化の具体的事例」の有無を達成判断の指標とする。
7.自治体等との連携
(1)自治体との連携
①大崎上島町
◇これまでに、本校と本町とは包括連携協定(H20年1月7日締結)に沿って、産業・文化・教育・学術等の分野で相互に連携・協力し、本町の振興・発展と人材育成に関する共同事業を実施してきた。
◇本事業に係る教育・研究・社会貢献の各活動に対しても、本町は人的・物的・財政的支援の充実・強化を計画している。
②広島県
◇これまでに、本県は教育活動に対する関連施設の使用や公募型研究助成事業等で本校への支援を行ってきた。
◇広島県には多数の島嶼地域がある。本県は、「瀬戸内 海の道」構想
を掲げて、内海エリアの振興・活性化に取り組んでいる。具体的には、瀬戸内に点在する地域資源を磨き、相互に連携させ、エリア全体の魅力アップと地域産業の活性化、戦略的な情報発信等に取組み、国内外からの観光客・交流人口の拡大や、消費効果・経済波及効果の増大を目指している。
◇本構想と本事業は、相互に密接な関係があり、本県と相互に連携・協力して事業を推進する。
③日本離島センター
◇全国離島研究については、公益財団法人日本離島センターの指導・助言を仰ぎながら、発展・充実を図る。
◇同センターは離島に関する調査研究並びに提言、講演会・研究会・研修会の開催、広報誌その他の図書の刊行・配布、情報発信、イベントの開催、情報の収集、資料の整備・公開、島づくり活動への助成などの業務に取り組んでいる。
④地元企業・団体・機関
◇これまでに、町教育委員会及び町立小中学校、本校産業振興交流会(地元企業60社)、木江地区造船海運振興協議会、町地域協議会、NPO 法人「かみじまの風」等と、研究・社会貢献の各分野で連携・協力して事業を実施してきた。
◇本申請に係る事業においても、これらの教育機関・地元企業・団体との連携・協力関係のさらなる発展・充実を図る。
8.事業実施計画
年度ごとに、実行委員会、教育、研究、社会貢献、情報発信、評価ごとに事業計画を策定し、それぞれの事業を実施する。
(1)教育
(省略)
(2)研究
(省略)
(3)社会貢献
(省略)
(4)情報発信
①本事業に係る情報発信用データベースに係るハード・ソフトの整備を行う。
②本事業に係るデータや情報を入力・発信し、本事業の成果を全国離島関係者で共有・活用する。
③シンポジウムを開催し(大崎上島町、広島市、東京都)、外部講師による特別講演と本事業の成果報告を行う。
④年度ごとに本事業の報告書を作成し、全国離島自治体及び関係機関・団体に配布する。
9.教育研究支援事業の主な採択実績
(1)文部科学省・大学教育改革支援プログラム(いずれも、他高専・大学との共同事業)
①大学間連携共同教育推進事業(H24~H28年度)「海事産業における高専・産業界連携による人材育成」
②戦略的大学連携支援事業(H20~H22年度)「海・技・人の光る呉市周辺沿岸島嶼部の総合人材育成」
③現代的教育ニーズ取組支援プログラム(H18~H20年度)「海事技術者のキャリア教育プログラム-強い職業意識と高い職業能力を備えた海事技術者の育成-」
④現代的教育ニーズ取組支援プログラム(H18~H20年度)「高専間連携を活用した体験型環境教育の推進―持続可能な環境社会を担うエンジニア育成のための体験型教育プロジェクト-」
(2)他省庁・研究開発支援事業
①総務省・戦略的情報通信研究開発推進事業(H22~H23年度)、「大崎上島のお出かけ案内システム"しまナビ"」の開発
②環境省・環境研究総合推進費事業(H24~H25年度)「赤潮発生時のデータ観測システムによる養殖業の漁業被害軽減に関する研究」
成果報告書
・平成25年度成果報告書 (PDF:15.5MB)
・平成26年度成果報告書 (PDF:22.1MB)
・平成27年度成果報告書 (PDF:29.2MB)
・平成28年度成果報告書 (PDF:58.3MB)
・平成29年度成果報告書 (PDF:43.4MB)